IG Photo Gallery企画展
渡辺眸展「封鎖の内側 東大全共闘1968‐1969」
IG Photo Galleryでは2020年2月18日(火)より渡辺眸展「封鎖の内側 東大全共闘1968‐1969」を開催いたします。
渡辺眸は1960年代後半から写真家として活動を始め、都市文化の表層をめくって見せる作品で高い評価を受けました。
東京綜合写真専門学校の卒業制作だった『TEKIYA 香具師』は、祭りのたびに屋台を建て商売をするテキ屋たちの生業を至近距離から撮影し、どこからともなく現れ、去って行く彼らの素の姿に迫っています。
また、同じ頃、欧米のヒッピームーブメントとベトナム反戦運動、日米安保反対運動などの「政治の季節」を背景に、若者文化が盛り上がりを見せていた新宿を、同じ若者の視線で捉えた『1968新宿』の撮影も行っています。
そして、やはり同じ頃、新宿とは別の場所に同年代の若者たちが集い、声を挙げる事態が起きていました。大学生たちによる全共闘運動です。
渡辺はこのムーブメントにも敏感に反応し、東大、京大の学生たちの姿を撮影しています。なかでも東大全共闘による安田講堂バリケード闘争に際しては、唯一、写真家として、バリケード内に入り込み、彼らと行動を共にし、たいへん貴重な写真を撮影しています。
今回、IG Photo Galleryで展示するのは、東大全共闘に焦点を絞った作品群です。
すでに写真集として二度刊行され、角川文庫版の『フォトドキュメント東大全共闘1968‐1969』が書店に並んでいます。昨年もnap gallery(千代田区末広町)で「東大全共闘 1968-1969 続 封鎖の内側」としてシリーズから展示されました。
今回の展示はそれからあまり間をおかずに展示することになりますが、それには理由があります。
一つは、当ギャラリーのオーナーが当時、大学生として全共闘運動に共感してすごしているという個人的な思いがあること。もう一つは、香港で起きている大規模な民主化デモです。
マスメディア、あるいはインターネットのSNSを通して伝えられる彼の地の様子は、私たちに1960年代後半の政治の季節を思い起こさせずにはいません。
また、世界的に格差が広がり、弱者がどう声を挙げていくべきかの議論が高まるなか、権力に対して抵抗する人々の写真に注目が集まっています。
こうしたギャラリーの思いと、世界的な状況が交差する場所として、ささやかではありますが、過去と現在を重ね合わせて見る試みとしてこの展覧会を企画しました。
写真に写っているのは1968年から69年にかけての「過去」ですが、その「過去」がどのように見えるかは、「いま」しか体験できません。
渡辺眸の貴重な作品を前に、写真に写った世界と私たちの間にある約半世紀の時間について考えるきっかけにしてほしいと願っています。
なお、会期中には作家によるトークショーを予定しています。ぜひ、ご参加ください。