IG Photo Gallery 企画展
海原力展「WHISPERING HOPE」
海原はアメリカの国際写真センター、ハートフォード大学で写真を学び、現在はニューヨークを拠点に活動する写真家です。
「WHISPERING HOPE」はアメリカ各地を長距離バスで旅し、撮影したシリーズ。2011年から2016年にかけて、とくに目的地を設けずに、約20回の旅を繰り返してつくりあげた写真群です。2017年にアメリカで刊行された同名の写真集は、マドリードで開かれた国際写真祭「フォト・エスパーニャ」の「THE BEST PHOTOGRAPHY BOOK OF THE YEAR」の私家版カテゴリーでspecial mention(特別賞)を与えられました。今回の展示では、走るバスの窓外の風景を中心に、バスターミナルの写真を加えて構成しています。
アメリカは多様な民族、文化、バックグランドを持つ人々の集合体であり、そこから時代を先取りする政治体制や社会制度、生活様式や文化作品を育んできた国です。これまでも数多くの写真家がアメリカを旅し、写真を撮影してきました。その中にはロバート・フランク『アメリカンズ』、スティーヴン・ショア『American surfaces』、アレック・ソス『Sleeping By the Mississippi』などの名作があり、この作品もその系譜に連なるものです。
とくに海原の場合、移動手段に長距離バス(グレイハウンドバス)を選んだことに大きな意味があります。クルマを持たない人々が主な乗客となっている長距離バスは、格差社会の現実を載せて広大な大地をひた走る存在だからです。
「WHISPERING HOPE」はアメリカにおけるドキュメンタリー・フォト(記録写真)の伝統に則りつつ、いま、写真に何が可能なのかという問いを胸に撮影した作品だと言えるでしょう。海原にとって日本初個展となる本展覧会にご期待ください。
なお、7月20日(土)には海原力とタカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)によるトークショー(入場無料)が行われます。