竹洞賢二展「Naked Colors」
竹洞賢二は写真表現を通じて自然と人間との関わりを探求している写真作家です。少年時代から写真に親しんでいた竹洞は二十代の頃に雄大な自然風景に惹かれ、北海道を主題とする風景写真に取り組みました。その後、一度写真から遠ざかり、2010年代に入って再びカメラを手にします。自然観察指導員の講義を受講したことをきっかけに、自然を「見る」こと、「知る」ことへの興味が生まれ、新たに写真を表現のツールとして用いることを考え始め、現在の活動に至ります。
今回展示する作品は植物を撮影した写真です。私たちはイメージする植物は、木の葉は緑、季節によっては紅葉、幹や枝は茶色で、花は色とりどりといったステレオタイプなものです。しかし、実際に眼を凝らせば、自然界には都市で暮らす私たちには名付けようのないさまざま色が存在していることに気づきます。
竹洞が「Naked Colors」と名付けているのは、そのように私たちが本当には「見て」いない、認識していない植物の姿です。写真で撮影されたそれらが「Naked(裸の、むき出しの)」「Colors(色)」であるという竹洞の表明は、私たちが肉眼で見ようとしない自然の色を表現しようという作家の意志表明だと言えるでしょう。また、写真を見る鑑賞者にとっては、機械を通した色が本当にむき出しのものなのか、というアイロニカルな問いを含んだタイトルだと捉えることができるはずです。
温暖湿潤の気候と豊かな自然に恵まれたこの国では、欧米の自然観とは異なる文化が培われてきました。自然をどのように認識するかは信仰や倫理観、生活文化とも深く関わってます。現代に生きる私たちにとっても、身近で奥深い問題だと言えるでしょう。竹洞の作品もまた現代の日本人による自然観を問う試みの一つなのです。