IG Photo Gallery |タカザワケンジ展「私写真」  


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2024/1/9~1/27
IG Photo Gallery企画展

タカザワケンジ展「私写真」

 IG Photo Galleryでは2024年1月9日(火)よりタカザワケンジ展「私写真」を開催いたします。
 タカザワは当ギャラリーのディレクターであり、写真評論家。写真の実践としてこれまで「非写真家 non-photographer」(2018)「someone's watching me」(2021)などの作品を発表してきました。
 今回のテーマはタイトルにもあるとおり「私写真」です。
 私写真は日本の写真批評のタームの一つです。しかしその定義はいまひとつはっきりしません。「私写真」をネットで検索すると「撮影者の身のまわりの事象やプライヴェートな出来事などを題材とした写真のこと」(Artwords「私写真」冨山由紀子)と説明されています。
 富山も引用している飯沢耕太郎の『私写真論』(筑摩書、2000)によれば、写真は撮影者が存在する時点で完全な客観はありえず、「写真が本来的に"私的"なメディアである」ことを前提とし「あらゆる写真は「私写真」であり、"私"と被写体(現実世界)との関係の網の目から隠し出されてくる」と広義の私写真を論じています。その一方で、狭義として「"私"がはっきりと写りこんでいる写真」としています。
 また、写真家の松本徳彦は、私写真の元祖とされる深瀬昌久の『洋子』、荒木経惟が妻、陽子を撮影したシリーズについて「ともに、私的な情景を巧みに私小説的風景にまとめ上げ、その時代の世相、風俗に織り込むという、ユニークな方法を編み出していて、一九七〇年代初頭を飾るパーソナル・ドキュメントの代表といわれている」(『昭和をとらえた写真家の眼』朝日新聞社、1989)とし、私写真をパーソナル・ドキュメントの一つとしてとらえています。ちなみにパーソナル・ドキュメントは客観を装った報道写真に対し、個人的な視点をもとにした記録写真であり、ロバート・フランクの『アメリカ人』(1958)がその源流とされています。
 私は私写真(i-photography)を、私小説(i-Novel)にヒントを得た写真作品の形式だと考えます。私的な事柄を撮影した写真というだけでなく、そこに文学的なテーマ、それも古典であり普遍的な、生(性)と死、パートナーや家族との葛藤といった要素が中心にあると思うのです。
 しかし、私写真が私小説について論じられるがごとく日本的な表現だとは思いません。アニー・リーボヴィッツの『A Photographer's Life』(2006)は「私写真」としかいいようのない作品だと思うからです。私写真は個人的な体験を普遍化するための一つの方法、可能性として開かれたものだと思います。
 では、「私写真」とはどのようなもので、どのような要件を満たすことでそう感じられるのでしょうか。
 今年、私の疑問は、私自身の問題として浮上しました。
 この夏、母が94歳で亡くなりました。私は45年前、10歳の時に父を亡くし、母1人子1人で18歳まで過ごし、その後、親元を離れて一緒に住むことはありませんでした。展示では、父の死から母の死までの45年間の間に撮影された写真をもとに「私」を中心とした世界に生と死、人生に潜んだ「何か」を描けるかを試みます。
 どのような展示になるか、私自身にもまだわかりません。しかし、展示をご覧になった方が、私写真について考えるきっかけになるようなものにしたいと思っています。
 なお、展示期間中に、今回の展示を踏まえ、私写真についてオンラインレクチャーを行う予定です。

タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)

** 安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。

■作家プロフィール
タカザワケンジ Takazawa Kenji
1968年前橋市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。写真評論、インタビューを雑誌に寄稿。写真集の編集、写真についての展示など、写真のアウトプットに対する実践も行っている。解説を寄稿した写真集に渡辺兼人『既視の街』(AG+ Gallery、東京綜合写真専門学校出版局)、石田省三郎『Radiation Buscape』(IG Photo Gallery)、井上雄輔『Containers in Tokyo』(Case Publishing)、福島あつし『ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ』(青幻舎)、小西正敏『新しい季節』(私家版)、内倉真一郎『忘却の海』(赤々舎)ほか。著書に『挑発する写真史』(金村修との共著、平凡社)。ヴァル・ウィリアムズ著『Study of PHOTO 名作が生まれるとき』(ビー・エヌ・エヌ新社)日本版監修。京都芸術大学、東京綜合写真専門学校、東京ビジュアルアーツで非常勤講師を務める。IG Photo Galleryディレクター。

個展
「SWM2.0 パレイドリアの罠」(IG Photo Gallery、東京、2023)
「昨日のウクライナ」(こどじ、東京、2022)
「someone's watching me」(IG Photo Gallery、東京、2022)
「someone's watching me」(Photo Gallery Flow Nagoya、名古屋、2021)
「郷愁を逃れて」(IG Photo Gallery、東京、2020)
「バブルのあとで」(こどじ、東京、2020)
「非写真家3.0 こぼれた水をコップにもどす」(IG Photo Gallery、東京、2019)
「非写真家2.0 入れ子の部屋 Nested room: non-photographer part2」(MUNO、RAINROOTS、paperback、名古屋、2018)
「非写真家 non-photographer」(IG Photo Gallery、東京、2018)
「非写真家 non-photographer」(MUNO、RAINROOTS、paperback、名古屋、2018)
「Osamu Kanemura's New Work? 」(The White、東京 2016)
「CARDBOARD CITY」(The White、東京 2015)
「Road and River」(アガジベベー、東京 2007)

グループ展
「寫真作家主義──Takazawa Kenji 寫真表現工作坊聯展」(田園城市生活風格書店、台北、2023)
「写真史(仮)」(金村修との二人展、176ギャラリー、大阪、2017)
「写真史(仮)」(金村修との二人展、The White、東京、2017)
「写真の地層」展 Vol. 8(VIII)(世田谷美術館区民ギャラリーB、東京、2007)
「写真の地層」展VI(世田谷美術館区民ギャラリーB、東京、2005)

著書
『昨日のウクライナ』(Triplet、2022)
『someone's watching me』(Triplet、2021)
『ESCAPE』(Triplet、2020)
『偶然の写真史II』(Triplet、2019)
『偶然の写真史I』(Triplet、2017)
『挑発する写真史』(金村修との共著、平凡社、2017)
『Kanemura's people』(Triplet、2016)
『窓とパンプス』(Triplet、2015)

■会期
2024年1月9日(火)~27日(土)
時間:11:00~18:30
休廊:日曜日・月曜日・祝日

■レクチャー「私写真」
1月13日(土)18:00~
タカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)
You Tubeにて、配信いたします。
チャンネル名:IG Photo Gallery

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