IG Photo Gallery 企画展
鈴木崇展
Though this be madness, yet there might be method in't.
そこにはもしかしたら筋道があるのかもしれない。
IG Phto Galleryでは2019年2月5日(火)より鈴木崇展「Though this be madness, yet there might be method in't.そこにはもしかしたら筋道があるのかもしれない。」を開催いたします。
鈴木崇は米国ボストンとドイツのデュッセルドルフで写真と美術を学び、現代美術としての写真作品の制作に取り組んできました。近年は2014年のグループ展「これからの写真」(愛知県美術館)、2015年の個展「Form-Philia」(IMA Gallery、東京)で作品を発表したほか、ドイツと日本で3冊の作品集を刊行し、国内外で高い評価を受けています。
今回、展示する作品は2014年から取り組んでいる都市写真のシリーズ「Fictum」をベースにした、新たなインスタレーションとなります。
近代都市の発展と軌を一にして私たちの生活に浸透してきた写真は、これまで数多くの都市写真を生みだしてきました。ヨーロッパにおける近代写真の父、ウジューヌ・アジェ、アメリカで芸術写真の確立に貢献したアルフレッド・スティーグリッツの双方にとって、都市が重要なモティーフであったのは偶然ではありません。彼らはその作品によって、直線で構成された近代都市を表現するにふさわしいメディアが写真であることを証明したのです。
鈴木の都市写真が、彼らを含めたモダン・マスターズの仕事を前提にしていることは間違いありません。そして、巨匠たちの撮影手法が一般化し、誰もがスマートフォンで都市の景観をたやすく表現できるようになったいま、都市の新しい写真表現が可能か、という問いに直面している作家の1人だといえるでしょう。
鈴木が「Fictum」シリーズで試みてきたのは、複数の写真を横1列に組み合わせることで、新たなイメージをつくりだすというもの。都市風景の再構築とでもいうべき方法です。作品を構成する写真1点1点からは、モダニズム写真が確立した線と面に対する写真表現を踏襲しつつ、たえず変化し続ける都市と向き合う作家の姿勢がうかがえます。しかし、それらの写真が組み合わされたとき、そこにはつながるはずのない線と面が接した虚構のパノラマが生まれるのです。
写真1点1点は写実的であり、このうえなくリアルで都市のイメージとしか呼びようのない写真です。しかし、全体としては現実にはありえないつながり方をした風景となっています。言い方を変えれば、見る者に違和感を感じさせながらも、見方によっては筋の通った世界だと言い換えることもできるでしょう。都市を見るとはどういうことか? 都市を写真で表現するとはどういうことか? という問いを見る者に問いかけてきます。
写真というメディアを通して、視覚の可能性を探究してきた作家の新たな1歩を、ぜひご高覧下さい。