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2023/4/4~4/21
IG Photo Gallery企画展

ロバート・ライオンズ展「Rubber Soul/Redux」

 IG Photo Galleryでは4月4日(火)よりロバート・ライオンズ展「Rubber Soul/Redux」を開催いたします。
 ロバート・ライオンズはアメリカ・オレゴン州ポートランドを拠点に活動している写真家。今回が日本での初個展となります。
 ライオンズは1970年代から大学在学中から作家活動を始め、1979年にイェール大学で修士号を取得。ハートフォード大学アートスクールで、国際リミテッド・レジデンシー写真MFAプログラムを設立し、ディレクターを務めたほか、欧米の教育機関で写真教育に携わってきました。
 写真家としては1992年にエジプトを題材にした写真集『Egyptian Time』を、1998年には写真集『Another Africa』を発表しています。いずれも欧米社会が非西洋文化圏であるエジプトやアフリカに対して持つ漠然としたイメージに対して、自身の目で発見した「私的」で「詩的」なドキュメンタリー写真です。
 ライオンズの長年にわたるアフリカ大陸での撮影が生み出した代表作が2006年刊行の『Intimate Enemy: Images and Voices of the Rwandan Genocide』です。ルワンダでツチ族とフツ族の間で起きた虐殺の、殺人者、共犯者、被害者を撮影したモノクロのポートレート作品ですが、写真それぞれにキャプションはなく、誰が加害者で、誰が被害者かを特定しないまま読者はページをめくっていくことになります。アフリカの暴力についての研究者、スコット・ストラウスのインタビューが収録されているため、ルワンダで起きたこと、それぞれの人物の体験が文字から読み取れます。しかし、写真の中の人物たちにとって、それらの凄絶な体験がどのような精神的な影響を与え、人生を変えたのかについては、私たち読者一人ひとりが想像し、考えをめぐらすほかありません。
 近年、ライオンズはアメリカ国内で撮影した作品を発表しています。『Pictures From The Next Day』(2017)はとある老齢の男性のポートレートと、彼の住まいと愛用の品々、部屋に飾ってある模型飛行機などから、彼がすごしてきた人生の時間と時代の変化を読み取ることのできるカラー作品です。また、『One Eye Crying』(2018)では、自身にとっても思い入れのある場所であり、ハドソン・リバー派の画家たちにインスピレーションを与えたことでも知られるアメリカ北東部で、かの地に特有の美しい光を生かしたポートレート、風景、静物のカラー作品を発表しています。
 今回、展示する「Rubber Soul/Redux」は日本で撮影された作品です。ライオンズは大学のカリキュラムの一環で学生たちを連れ、これまで日本を何度も訪れています。そのときに目にした印象的な光景を撮影したモノクロ写真のシリーズです。
 異文化からやってきた写真家が、その文化の中で暮らしている人が見過ごしているものを見つけだし、写真で表現することはこれまでも数多く行われてきました。東京は世界有数の大都市であり、外国人写真家たちがおびただしい数の写真を残しています。ライオンズの作品の特徴は、冷静沈着に光とその環境を観察し、瞬間的に起きていることですら、永遠に続くかのようにイメージをフリーズさせることです。グレートーンで表現された写真は私たちの目を長時間引きつける力を持ち、フレームの中に写っているものの意味について考えることを促します。
 こうした写真の流儀はまさしくアメリカン・ドキュメンタリーが築き上げてきた写真文化であり、ロバート・ライオンズはその伝統に連なる作家です。ライオンズが日本の都市風景の中に何を見て、何を表現しようとしたのか。ぜひ、ギャラリーでその目でご覧いただきたいと思います。
 なお、展覧会開催にあたり、作家とギャラリー・ディレクターの対談をオンラインで行うほか、少人数による1日間のワークショップを行います。

タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)

■作家ステートメント
 「Rubber Soul」は、よく前を通っていた東京の五反田駅近くにあるビルから拝借したタイトルです。私は英語を母国語としない文化圏で、英語がどのように使われているかにいつも引き寄せられます。東京を毎日散歩していると、風景の中に不思議な言葉を見かけることがあり、それがどのように組み合わされ、どのように感情を表現しているのか、想像を掻き立てられることがしばしばあったのです。この文化、この場所で異邦人である私の五感は敏感になっていて、日常の中で、私の想像(心の目)によって、驚くべき関係性を見る特権を与えられていました。そのシーンをマクロ的に見ることもあれば、その瞬間、その光、その身振りがあいまって、魔法がかかったように見えることもありました。 これらの写真イメージはその経験の記念品です。

ロバート・ライオンズ

 "Rubber Soul" is a title borrowed from a building I passed daily near Gotanda Station in Tokyo. I have always been attracted to how the English Language is used in cultures where it is not the native tongue. On my daily walks in Tokyo, I often saw wonderful words in the landscape that fired my imagination, in how they were combined and used to present feelings. Somehow being a stranger in this culture and place all my senses were alert and in the everyday I was privileged to see amazing relationships in my imagination(minds eye). Sometimes this took the form of a macro look at the scene and other times it was that moment, that light, that gesture that combined to expose magic. These images are the mementos of my experiences.
Robert Lyons

■作家プロフィール
ロバート・ライオンズ Robert Lyons
 1954年マサチューセッツ州モールデン生まれ。オレゴン州ポートランド在住。イェール大学で修士号を取得。ハートフォード大学アートスクールで、国際リミテッド・レジデンシー写真MFAプログラムを設立し、ディレクターを務める。また、エミリー・カー美術大学、ワシントン大学、フォトグラフィック・センター・ノースウエスト、国際写真センター、ドイツ・ベルリンのオストクロイツシューレなどで教育に携わる。2009年のマクダウェル・レジデンシーを始め、多くの賞を受賞。アメリカやヨーロッパで広く展示され、以下のような数多くの美術館、コレクションに所蔵されている。メトロポリタン美術館、シアトル美術館、ワシントン大学ヘンリーアートギャラリー、マイクロソフト社、ホールマーク写真コレクション、ネルソン・アトキンス美術館、ベス・ハテフツォートディアスポラ美術館(テルアビブ、イスラエル)など。主な写真集は以下の通り。『Egyptian Time』(Doubleday, 1992)、『Another Africa』(Bantam Dell Doubleday, 1998)、『The Company of Another』(Galerie Michael Schultz Berlin, 2003)、『Intimate Enemy: Images and Voices of the Rwandan Genocide』(Zone Books, 2006)、『One Eye Crying』(Roman Nvmerals, 2016/18)、『Pictures From The Next Day』(Zatara Press, 2017)。

■会期
2023年4月4日(火)-21日(金)
時間:11:00~19:00
休廊:日曜日・月曜日・祝日
** 安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。

■トークセッション(無観客)
4月8日(土)18:00~
ロバート・ライオンズ×タカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)
通訳:海原力(写真家)
You Tubeにて、配信します。
チャンネル名:IG Photo Gallery


■ワークショップ(対面)

定員に達しましたので、締め切りました。

 ロバート・ライオンズ展「Rubber Soul/Redux」開催にあたり、ロバート・ライオンズによる1日間のワークショップを行います。
 限定8名の少人数のワークショップです。
 参加者はそれぞれ20~40枚(A4サイズ程度)の写真を持参してください。ロバート・ライオンズとともに講評と編集についてのアイディアを話し合います。

<概要>
講師:ロバート・ライオンズ
通訳:海原力(写真家)
参加費:15,000円
定員:8名
日時:2023年4月22日(土)11:00~19:00
場所:IG Photo Gallery
東京都中央区銀座三丁目13番17号 辰中ビル3階

<ワークショップ開催にあたって、ロバート・ライオンズからのメッセージ>

犀を想う

“昔々、中国で禅師が犀の角でできた珍しい扇子を弟子に渡した。しかし、弟子はそのことを忘れていた。ある日、禅師は弟子に「あの犀の扇を持ってきてくれ」と声をかけた。弟子は「あの扇子はとっくに壊れてしまいました」と答えた。禅師は「それなら、犀を連れてきなさい」と言った。”
(『碧巌録』第91則「犀牛扇子」より)

 想像と現実を探求するワークショップです。

 参加者はそれぞれ20~40枚の写真を持参してください。写真をどんな順序(シークエンス)で並べるかを考えたり、写真が見るものにどんな質問を投げかけるか、どんな想像や詩を与えてくれるかをみんなで考えましょう。

 シークエンスは、ただ単に写真イメージを並べるだけではありません。アイデアや感情、コンセプトを増幅させる方法にもなりえます。アルフレッド・スティーグリッツが最初に見つけ、マイナー・ホワイトがさらに探求した「等価(イクイヴァレント the Equivalent)」という考えを参照し、これをベースにして、視覚言語に対する理解をより深めることができるのです

ワークショップの前後に読んでおくと参考になる本をいくつか紹介しておきます:
 ベン・シャーン『The Shape of Content』*
 イタロ・カルヴィーノ『マルコ・ポーロの見えない都市』
 オイゲン・ヘリゲル『弓と禅』
 マイナー・ホワイト『Mirrors, Message,Manifestations』*
 レイモンド・カーヴァー『滝への新しい小径』
 リチャード・ヒューゴ『The Triggering Town』*
 日本語訳がないもの(*)もありますがご容赦ください。ワークショップに参加するにあたって、事前に読んでおく必要はありませんが、どんな本か、どんな著者かを調べておくとよいと思います。

 みなさんの作品を拝見できるのを楽しみにしています。

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