IG Photo Gallery 企画展
石田省三郎展 [Radiate-scape]&[Crossing Ray]
石田省三郎は弁護士として活動するかたわら、2017年に京都造形芸術大学通信写真コースを卒業。弁護士業務と並行して写真作品を制作してきました。2018年に、写真集『Radiation Buscape』(IG Photo Gallery)を上梓し、東銀座に写真専門ギャラリーIG Photo Galleryを設立するなど、写真表現と社会の接点を探る活動を続けています。
今回、石田は2つのシリーズを発表いたします。[Radiate-scape]は昨年、IG Photo Galleryで発表した「Radiation Buscape」の続篇。[Crossing Ray]は大阪のHiju Galleryで展示された作品を2期に分けて展示する巡回展となります。
[Radiate-scape]
3/12~3/30
2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震は東北地方に甚大な被害を与え、現在も復興の途上にあります。中でも福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の影響が続いています。
石田省三郎は、2016年より福島県内の帰還困難区域を走るバスから、窓外を撮影するプロジェクトを続けています。
石田が捉えた風景は主が戻らぬまま朽ち果てようとしている住宅、かつて営業していた商業施設、雑草が生い茂る畑など、福島第一原発事故がつくりだした現実を生々しく伝えています。
バスはJR常磐線の代行バスです。いまも一部区間が復旧しないため、富岡駅と浪江駅を往復するバスが運行されています(1便のみ原ノ町駅行き)。
特別に許可を受けた報道写真家たちの作品と比べれば、写真から受ける印象は平凡でおとなしいものに感じられるかもしれません。しかし、誰でも乗車できるバスからの眺めは、見慣れた日常生活のすぐ近くに帰還困難区域があることを想起させます。
このシリーズは2018年に写真集『Radiation Buscape』として発表されていますが、刊行から1年を経て、新作を加えた新たな作品として展示いたします。
展示作品点数:26点
[Crossing Ray]
①4/2~4/13
②4/16~4/27
東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた福島第一原子力発電所の事故は、東京に広範囲での計画停電と、節電のための燈火自粛を促しました。当時、私たちは光を失った大都市の姿に、夜間を照らす光こそが繁栄の証であり、その繁栄が非常にもろい土台の上にあることに気づかされました。
「Crossing Ray」は東京の交差点に面した四方向をそれぞれ撮影し、比較暗合成したシリーズです。比較暗合成とは画像処理ソフトによる画像合成の1つで、複数の写真をピクセル単位で比較し、もっとも暗いものを選び合成するというもの。その結果、光が乏しい画面の中にうっすらと建築物が浮かび上がる非日常的なイメージをつくりだされています。これらのイメージは大都市東京を不気味な廃墟のようにも、光を失った巨大な建築物の群れのようにも見せています。夜の東京から華やかな光をマイナスしたときに現れるのは、もしかしたら未来の東京の姿かもしれません。
展示は2期にわたって行われ、第1期では渋谷、霞ヶ関などの交差点を、第2期では当ギャラリーの所在地でもある銀座の交差点で構成されます。
展示作品点数:各期9点
東日本大震災後に、「記録」と「表現」の両面からつくられた2つの写真作品をぜひご高覧下さい。
なお、会期中の3月16日(土)には石田省三郎とタカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)によるトークショー(入場無料)が行われます。