青木大祐展「モック」-Mock The Human
青木大祐は自身の身体を題材にしたセルフポートレート作品を制作している写真作家です。今回の展覧会は青木にとっての初個展となります。
国内外の観光客が押し寄せる浅草の雷門。早朝なのでしょうか、人影がほとんどないその場所に寝そべっている一人の男性がいます。仏像の螺髪(らほつ)を思わせる銀色の頭髪と、着物とも洋服ともつかず、未来的ですらある銀色の服をまとい、カメラを見つめるその傍らには撮影用のライトが設置されています。彼は一体何者なのでしょうか。
青木は自身が演じ、写真に写っている人物を「モック」と呼んでいます。モックとはモックアップの略で、模型という意味があります。実際の製品をつくる前にそのイメージをかたちにしたものであり、あくまでも外側のデザインはされているものの中身はないという存在です。
青木は外側だけの、中身のない、プロトタイプとしての人間を表現しているようです。では、そうした人間以前の「外側」から私たちが読みとれるものは何でしょうか?
SNSでハンドルネームを使い、オンラインゲームでアバターを設定し、複数のアカウントを駆使してさまざまな人格をつくりだす。インターネットが普及し始めて約20年の間に、私たちは唯一の同一性を持った「私」が神話であり虚構であることを知ってしまいました。青木が主題としているのは、複数の「私」を演じ分けることが当たり前になったこの時代の人間が直面している悲喜劇だと言えるでしょう。
青木は今回の個展で写真作品約150点と動画作品2点を含むインスタレーションを発表いたします。
なお、展示期間中の7月20日(金)19時よりIG Photo Galleryディレクター、写真評論家のタカザワケンジと作家との対談が、展示最終日の8月4日(土)17時より作家によるパフォーマンスが予定されています。
これからの活動が期待される新進作家の初個展にご注目ください。