ヴィクター・シラ展「NO PLACE: SOMEWHERE」

　IG Photo Galleryでは2023年7月4日（火）よりヴィクター・シラ展「NO PLACE: SOMEWHERE」を開催いたします。
　ヴィクター・シラはニューヨークを拠点に活動する写真家です。IG Photo Galleryでの個展は昨年7月の「Pictures of Nothing: Bookworks and Photographs」に引き続き、2度目となります。
　前回の「Pictures of Nothing: Bookworks and Photographs」では写真プリントと、プリント・オン・デマンド（Print-on-demand）とリソグラフを使った写真集、アーティストブックを展示しました。写真の編集可能性、本という表現形式の持つ力を感じさせるものでした。
　今回の展示は動画作品と写真プリントを展示します。前回の展示とは異なるヴィクター・シラの一面を知ることになるでしょう。
　2006年にジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団から写真部門のフェローシップを受けたシラは、移民についての動画作品をつくることを思い立ちます。
　シラ自身が少年時代にベネズエラからアメリカにやってきた移民であり、長年にわたって移民をテーマにした作品制作に取り組んできました。
　シラはメキシコからアメリカへと、危険な荒野を移動する移民たちの姿をとらえるべく、アリゾナ州南部の国道286号線を南下し、ツーソンとアメリカ・メキシコ国境近くのアリバカを結ぶササベという道を走りました。
　しかし移民の姿はいっこうに現れません。シラのカメラがとらえたのは乾いた土地と移民がその地をたしかに歩いていたという痕跡――落とし物やゴミなど――だけでした。ほかに移民キャンプを取材撮影したものの、当初の狙い通りとはいきませんでした。
　シラは取材に行き詰まりを感じ、編集しないまま映像をアーカイブしておくに留めました。しかし、撮影から17年がたったいま、あらためて当時撮影した動画と写真を見直し、新たな視点で編集し、作品として構成しました。
　シラは新たなコンセプトを以下のように表現しています。
「これは、荒野という存在に対する瞑想であり、その風景の中で反響する自画像でもある。荒野は広大で、時間を超越し、壮大である。危険でありながら、可能性に満ちている」
　動画作品では、この作品を1人の写真家が移民を撮影するためにこの野を訪れ、当地で移民たちを支援する老人とともにクルマを走らせる様子が描かれます。写真家と老人、そしてもう1人の登場人物それぞれが別々の目的で乾いた土地をさまよう。その姿の中に何を見るかは観客の想像力に任されています。
　なお、今回は残念ながらヴィクター・シラは来日しませんが、オンラインでトークセッションを行う予定です。

■作家プロフィール
ヴィクター・シラ　Victor Sira
ベネズエラ出身、ニューヨークを拠点に活動する写真家。グッゲンハイム財団フェローシップやニューヨーク芸術財団フェローシップなど、数多くのフェローシップを受賞している。国際写真センター（ICP、ニューヨーク）の展覧会「Photography Book Dummies」（2008）のキュレーションを担当。彼の作品は、「Rencontres d'Arles 2005」や「De l'Europe in Luxemburg 2007」などの個展やグループ展で紹介されている。国際写真センターの大学院にあたるICP-Bard MFA Advanced Photographic Studies Programの教授として、「The Book」の講義を立ち上げる。Bookdummypress（bdp）、dieFirma Print Room （PR）の共同設立者でもある。

■会期
2023年7月4日（火）～7月22日（土）
時間：11:00～19:00
休廊：日曜日・月曜日・祝日

■トークセッション(無観客）
配信中
ヴィクター・シラ×タカザワケンジ（写真評論家、IG Photo Galleryディレクター）

https://youtu.be/RQMs3cuBiCQ