IG Photo Gallery企画展
海原力展「SMOKE」
IG Photo Galleryでは2024年12月3日(火)より、海原力展「SMOKE」を開催いたします。
海原力は、日米を拠点に作品を発表している写真家です。2017年に出版した写真集『WHISPERING HOPE』で国際的な評価を得ました。アメリカの長距離バスの車窓から捉えた風景や乗客のポートレート、バス停やターミナルの様子を収めた同作は、アメリカの多様性と文化的背景をあざやかに描き出し、国際写真祭「フォト・エスパーニャ」で特別賞を受賞しました。
「SMOKE」は2024年4月にZINEとして発表された作品です。今回が初の展示となります。
2011年、アメリカのハートフォード大学大学院に在籍していた海原は東京での撮影を開始しました。しかし生まれ育った場所でもある東京は、海原にとって写真で表現することが難しい対象でもありました。
「東京の都市風景をどのように撮影できるか、カメラとレンズを挟んで、自分と被写体との物理的・心理的な『距離』を探していたが、まるで撮り方がわからなかった」(制作ノートより)
海原は撮影したネガフィルムはそのまま「東京」と題した箱に入れたまま、最低でも10年は寝かそうと決め、そのまま触れずにいたといいます。
2023年の終わりに、「東京」の箱を開け、ネガを検討した海原は、2011年春から2014年冬にかけて撮影した写真に目を留めます。それはとくに意識して撮っていたわけではない、街の喫煙スペースの写真でした。
「SMOKE」はまず喫煙をめぐる社会環境の変化についての作品だと言えるでしょう。90年代から議論が始まった公共空間での喫煙の是非は、喫煙スペースを設け、非喫煙者との棲み分けをするかたちで決着を見ています。この写真が撮影された当時は、喫煙スペースが都市風景の中でまだ珍しかった時代です。
また、2011年から2014年は、東日本大震災の衝撃とその余波が霧のように社会を覆っていた時代です。東京は被災地から距離があるとはいえ、報道を通じて知る災害から受ける心理的な傷や、原発事故の影響を恐れた記憶はこれらの写真と無関係ではないでしょう。
写真は撮影から時間を置くことで客観的な資料としての価値を発揮し始めます。「十年一昔」と言われ、時代の流れが加速する現代にあって、十年前はすぐそこにある過去なのか、それとも大きな価値変化が起きた昔なのか。
「SMOKE」は日本を代表する大都市における都市生活者のライフスタイルと、この10~13年の間に流れた時間について考察する機会を与えてくれるでしょう。
なお、12月14日18:00よりギャラリーでトークセッションをライブ配信いたします。そちらもぜひ、ご覧ください。
** 安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。
■作家プロフィール
海原力 Umihara Chikara
1974年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、渡米。国際写真センター(ニューヨーク)で学んだ後、ハートフォード大学(コネチカット)で写真を専攻。MFA(美術修士号)を取得。2018年、マドリードの国際写真祭「フォト・エスパーニャ」の「THE BEST PHOTOGRAPHY BOOK OF THE YEAR」で、初の写真集『WHISPERING HOPE』が私家版カテゴリーのspecial mention(特別賞)を獲得。個展に「 WHISPERING HOPE」(IG Photo Gallery,2019)ほか。ZINEに『BUS』(2023)『SMOKE』(2024)がある。
■会期
2024年12月3日(火)~21日(土)
時間:11:00~18:30
休廊:日曜日・月曜日・祝日
■トークセッション(オンライン)
12月14日(土)18:00~
海原力×タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)
You Tubeにて、配信します。
チャンネル名:IG Photo Gallery
*これまでのトークセッションの録画もございます。チャンネル登録をお願いします。