1. HOME
  2. 遠藤祐輔展
2021/11/9~27
IG Photo Gallery企画展

遠藤祐輔展「Post Decisive Moment」


 IG Photo Galleryでは2021年11月9日(火)より遠藤祐輔展「Post Decisive Moment」を開催いたします。
 遠藤は東京芸術大学美術学部先端芸術表現科を卒業し、大阪大学言語文化研究科博士前期課程に在籍中のアーティストです。これまで写真、映像を主なメディウムとして作品を発表してきました。今回は写真にフォーカスし、これまでも取り組んできた、ストリートスナップについての探求を深めた作品です。
 ストリートスナップとは路上で直感的に速写(スナップショット)すること。写真表現の伝統的な形式です。1930年代に小型カメラのライカが普及したことから一般化し、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロバート・フランク、ウィリアム・クライン、森山大道ら世界的に知られる写真家たちが数々の名作を発表してきました。
 しかし、近年、肖像権意識の高まりから路上で他人にカメラを向けることがマナー違反とされるようになってきました。遠藤はこうした状況を踏まえ、顔が人がいないストリート・スナップの写真を制作することを試みています。今回展示される作品はストリートスナップでありながら人間の顔が存在しません。
 また、遠藤はストリートスナップが追求してきた「決定的瞬間」についても疑問を呈します。
 「決定的瞬間」とは、1952年に刊行されたアンリ・カルティエ=ブレッソンの写真集(英語版)のタイトル「Decisive Mo-ment(決定的瞬間)」であり、カルティエ=ブレッソンの写真の代名詞として、また優れたスナップショットを表現する言葉として定着しました。ごく短い時間を写し取ることができる写真にとって、どの瞬間を選ぶかは重要な選択であり、その選択の正しさが「良い写真」の基準にもなったのです。
 しかし、動画が高画質になったいま、瞬間はその場で決定する必要がなくなり、あとから選ぶことが可能になりました。遠藤は実際に動画から「瞬間」を切り出すことで、決定的瞬間とは何かを問うています。
 もちろんいまも、路上で直感的にピークとなる一瞬だけを追い求める写真家は数多くいます。しかし小型カメラの発明がストリートスナップを可能にしたように、撮影技術の進化と社会の変化がストリートスナップの意味を変えようとしているのもまた事実です。
 町に監視カメラがあふれ、動画と写真が接近したいま、遠藤の作品はストリートスナップとは何かを考える契機になることでしょう。
 なお、この展示と同時に同名写真集がpaper companyから刊行されます。会場でも手に取ることができますので是非ご覧ください。

タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)

* 展示では入場者に写真集を安心して閲覧していただくため、空気清浄機、手指の消毒薬などの設置等の感染対策を行います。

■作家プロフィール
遠藤祐輔(えんどう・ゆうすけ)
1985年宮城県仙台市生まれ。東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業後、大阪大学言語文化研究科博士前期課程在籍中。2016年、「第14回写真1_WALL」審査員奨励賞(高橋朗選)、「第15 回写真 1_WALL」ファイナリスト。2019年、「写真新世紀 2019」優秀賞受賞。個展に「目に置いていかれないように」(ニコンサロン/東京・大阪、2018)。写真集に『幽霊の証言』『長井さんの話』『時間という概念がないところ、絵画と写真のように惹かれ合うけれど、光は境界線を漂うだけ』がある。

■会期
2021年11月9日(火)~11月27日(土)
時間:12:00~20:00(最終日は18:00まで)
休廊:日曜日・月曜日・祝日

■トークセッション(無観客)
11月13日(土)18:00~
遠藤祐輔×タカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)
You Tubeにて配信します。
チャンネル名:IG Photo Gallery


Page Top